そんなこんなで、
迷いに迷い黄昏迷い彷徨い迷いさらに迷いを経て、
無事に、最終目的地に着いたみかんでしたが、
その後、その最終目的地に住む友人に、
「私が思うに。
アンタが何回ココに来ても迷うのは、
ここの土地をよく知らない不安もあるからよ」
とか何とかもっともらしい事を言われ、
土地の事をよく知る為の修行 などという都合の良い名目の下に、
容赦無く、近所のスーパーマーケットへと、
一人でお買い物に行かされたのです。
まさに、はじめてのおつかい。
そこは、レジが6つもあるというのに、
常時、1つしか稼動してないであろうレベルのスーパーだったのですが、
難なく速やかに、買うように頼まれた物をカゴに揃える事も出来、
もはや、はじめてのおつかいに出演している子供達に勝ったつもりで、
意気揚々と、かつ鼻高々と、レジに並んでおったのですよ。
その時、店内は混んでいたのですが、
みかんの前には一人の、50代と思しき男性がおりまして、
今まさに、
ピッピピッピとバーコードを通してもらっている最中であられました。
その男性の品数は少なかった為、
すぐに終わるだろう と思っていたのですが、
世の中、そう甘くないのですね。
店員さんがその男性に、金額を告げようとした瞬間、
男性 「あ。忘れてた。
それと、スーパードライを1つ持って来て」
と、店員に対し、ビールを持って来るように注文するのですよ。
んまっ自分で取りに行けば良いものをっ
後ろにもたくさん人が待っているのだから、並び直せば良いものをっ
とか思ったのですが、
まぁ。まぁまぁ。
まぁね、常連さんであればそういう事もあるのだろう、
それにこの土地では当たり前の事やもしれぬし、郷に従えとも申しますしー
などと、地元人ではない、いわゆる、notジモティなみかんは、
大人しく待つ事にしたのです。
そしてその後、
「えっ?私が持って来るの?」チックに驚いた顔を一瞬見せた店員は、
親切にもビールを駆け足で取りに行き、ピッとバーコードを通した思いきや、
今度は、豆腐を持って来いと言われ、
また駆け足で取りに行き。
豆腐を取りに行ったと思ったら、今度は、
電池が欲しいとか言われて走らされ。
その後も延々と、
もはや、とっとこハム太郎並に走り回っていたのです。
当然その間、みかんを含める別の客は、
ずーーーっと待たされているわけですけども、
そんな、必死の笑顔で走り回り接客する店員さんの姿を見ながらにして、
誰が、
「早くしてよ!待ってるんだけど!」なんて文句など言えようものか。
「おい男性よ。もー良いだろう、もーじゅうぶんだろう。
もう…もう、その親切な娘を解放してやるのじゃっ」
と、誰もが涙ながらに思ってた。そんなフリしてた。
そしたらそんな時、
その男性が、トドメの一言。
男性 「あ。それからあと1つ」
なぬっ!?
さらに注文しちゃうチック?
みたいな事で、みかんの背後に並んでいる人々から、
いい加減、ちょっと溜息とか聞こえてくるんですけど、
もうこの際、さっさと注文しちゃえば良いじゃない、
そして、とっとと終わらせちゃえば良いじゃない、
みたいな、ほんのりと投げやりな雰囲気なんですよね。
そして同時に、
次は何を注文しやがるんだコノヤロウみたいな雰囲気さえ漂うわけですよ。
ビール、豆腐、電池、その他野菜諸々、さらには殺虫剤、
その上納豆、そして最後は何なんだコノヤロウ、
ハーバルエッセンスシャンプーとか言おうものなら、
背後にいる客達は皆、すかさず香りを確かめ始めるぞコノヤロウ、
くらいの勢いで、誰もが聞き耳を殺伐と立てていたわけですわ。
そんな中での、ラストオーダー。
男性 「それから…」
男性 「ひょ」
ひょ!?
周辺にいた人々、全てが振り返りましたよ。
そして耳を疑いましたよ。
「ひょって言った!?今、ひょって言った!?」 と。
そして走らなければならない店員さんももちろん、聞き返しましたよ。
店員さん 「ひょ!? ですか!?」
きっと聞き間違いだと、みかんも思いました。
ひょ なんていう面白おかしい名のものが、
スーパーで売ってるハズないと思いました。
皆様は、ひょ という名のものを聞いた事がありますか?
みかんは、生まれてこの方、一度もありません。
なので、聞き間違いだと信じてやみませんでした。
なのに。それなのに。
店員さんの聞き返しと、我々待ち人の心の問いかけに対し男性は。
男性 「ひょ です!」
堂々と言い切ったコレ。
ひょ以外の何者でもないという事実に、
店内一気に、ドヨメking。
店員一気に、焦ring。
店員さん 「ひょ!?ひょ ですか!? ひょ とは…?」
説明を求める店員さん。
無理も無い。ひょ じゃ、何が何だかわからないものね。
そして我々も知りたい。
ひょ が一体何なのか。何者なのか。
さぁ男性よ。説明求む。
男性 「だから、アレです!あのですね!」
うんうん!