そんなこんなで。
太郎先生がヅラーンに変身する前の姿はどんな姿なのか、
ピンポイントヅラーンなのだろうか、それともオールヅラーンなのだろうか、と、
クラスの中の皆が、太郎先生のその姿に釘付けになっていたのです。
正確には、頭部に釘付けになっていたのです。
しかしながら、例え太郎先生がオールヅラーンであろうが、
優しい太郎先生を好きな気持ちは、皆、変わらない。
何も、嫌いだから、そんなニックネームをつけたわけでもないのだろうし、
間違いなく100%、人工の髪だ と思ってつけたわけでもないのだろう。
だって、みかんが通っていた学校においては、嫌いな先生のことは、
名字を呼び捨てする事はあれど、ニックネームすらつけようとしないのだから。
そして明らかに人工毛なお方に対し、そのようなシャレではすまないニックネームなんてつけないのだから。
それを知ってか知らずか。
いや、恐らく知らなかったであろう太郎先生の、勇気ある告白の瞬間。
みかんは、
「(髪は薄くとも)志村けんも、ブルースウィリスも・・・
ふきだからー!!(訳:好きだから」
と、今で言うと、某CMの某韓国俳優風に叫びたい気持ちを抑え、
神妙な面持ちで微動だにせず、太郎先生の次の言葉を待った。
きっと、皆もそうだと思った。
「はなたのことが ふきだからー!!」(訳:あなたの事が好きだから)
と、誰もが某韓国俳優風に心の中で叫び、待ち続けるのだと思っていた。
フザケる人なんて、誰一人いない。言葉を発する事すら出来ない。
息をも止め、太郎先生の勇姿を最後まで見守る。
いやむしろ、最後まで見ている事すら出来ず、
学級委員長 「先生!もう良いんです・・・良いんです!
太郎先生は、太郎先生だから!!そんなもの、どうでも良い!」
とかなんとかって委員長が泣きながら言い出して、
みんなで、「そうだよ・・・せんせーい!!」とか言って先生に駆け寄り、
太郎先生も、「お・・・お前達っ・・・」とか涙を浮かべて言っちゃったりして、
それから涙ながらに抱き合って、最後には先生を胴上げしちゃったりして、
日の暮れる丘を、全員で無意味に猛ダッシュする みたいな、
金八チックな青春ストーリーが展開されるはず。
そうなるのだと思ってた。
好きな人に「好き」と、たった2文字を告白する事さえ出来ない自分、
そんな自分に比べ、今まさに、もの凄い告白をしようとしている太郎先生は、
なんて、勇気の鈴がリリンリンなアンパンマンなんだ と。
もはや、息をする事すら申し訳ない と。あぁもう、涙が出そうな思い。
太郎先生 「先生の、この髪は・・・実はな・・・」
みかん 「・・・・・・・・・・・・・・(はなたのことが ふきだからー!!」
太郎先生 「実は、カツ・・・!!」
みかん 「・・・・・・・・・・・・・・(はなたのことが ふきだからー!!(涙」
クラスのみんな 「